プロローグ

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 ―1―  終業のベルが鳴ると、いつもそわそわしてしまう。向こうでも、この鐘の音は聞こえているはずだ。眠りに落ちてさえいなければ。  初夏の若葉萌ゆる木々に囲まれた公立中学校。二ヶ月後に控えた文化祭の打ち合わせも早めに切り上げ、友人達との別れの挨拶もそこそこに学校を飛び出した。二日ぶりだ。会えるのは。  今日はどんな話をしようか。トップニュースはまず、美術の時間に、柴田が折角描いた水彩画を紙飛行機にして飛ばした事だろう。  飛行機は部屋を出て、外を歩いていた松川先生の禿げた頭に直撃。  よし、これで掴みは大丈夫。  その次の話は……和夫のゲームボーイが先生に破壊された事だな。授業中に遊んだりしているからそんな事になる、とは思うけれど、あれは先生もやり過ぎだよ。  宙を浮くように走り出した。一日で一番楽しい、幸せな時間がもうすぐやってくる。
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