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第1話
俺たちは、何時からこんなにも擦れ違うようになって仕舞ったんだろう。
『…おはよう優妃』
「………」
俺の名前は嵩御蔭 鳳澄(スオウ ホズミ)。
世界に名を轟かせる嵩御蔭財閥の現当主の数多く居る孫の内の一人。
そして今俺が挨拶をしたのは兄の優妃(ユズキ)。
「…おはよう鳳澄」
「!! おい彰、そんな奴と口利くな」
「けどアシュ」
「利くなっつってんだろ!」
「………分かったから睨むな」
俺に挨拶を返してくれたのは神埜 彰仁(カンノ アキマサ)。
挨拶をするどころか俺を物凄い勢いで睨みつけて来るのはアシュフォード・シノア。
二人とも一応俺の幼馴染みだ。
(一応ね)
「…悪いな鳳澄」
『いい。彰さんが悪いわけじゃないし』
そう、誰が悪いとか悪くないとかって言う話じゃない。
まぁ現実は何事にも白黒が付くから現状は俺が悪者ってことで話が通ってるんだけど。
(…シノは人の話を最後まで聞かないし)
一度「そうだ」と思うと余程のことがない限り頑としてその考えを覆そうとしないから、いちいち言い訳をするの面倒なのでもう放っている。
「ご飯、ちゃんと食べるんだぞ」
『……ん』
彰さんはそう言って俺の頭をふわりと撫でると、早々と俺から離れて行った優妃とシノの元へと足を向けた。
『…いただきます』
朝食が並ぶリビングには一人俺だけが残った。
(、だいじょうぶ)
俺の周りに人が居ないのは何時ものこと。
そして傍に居た人が離れて行くのもまた、何時ものことだから平気だ。
俺はまるで自分に言い聞かせるかのように心の中でそう呟いた。
『……………まずっ』
【091210】
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