日々

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バルカンも読み終わり、ウトウトしていた三時を回ると、弁当やおにぎりが入ってきた。 幹線道路のせいか、弁当は昼間まで良く売れる。 ビックリハンバーグ&カツが看板商品だ。 当然、店長も知っているだろうが廃棄すべき期限切れはこっそり頂く。 新聞屋も後からやって来る。 ここは松屋と協力してやらないと片付かない。 ブツブツ念仏を唱えるように人生論を語る松屋を聞き流すように頷きながら、哲平は陳列に集中した。 6時に牛乳屋の最後の検品が終わり、運送屋の買い出し客がチラホラ来て8時になると交代だ。 店長の奥さんともう1人、セミロングの女性が入って来る。 哲平はまるでアイドルでも見るような顔をし、顔が真っ赤になる。 『おはよー。原田くん、松屋さん』 女性はニコリと笑いながら哲平の横に立って、レジの両替を始めた。 一ノ瀬めぐみ 彼女の名前だ。 このコンビニの朝の顔でありマドンナ的存在である。 彼女にレジが代わるやいなや、立ち読みしていたドライバーら男らがレジに向かう。 これまた並び過ぎると、店長夫人が 『こっちにドーゾ!』 と言われるので、列ばない程度に1人ずつ彼女の元に行くのが掟のようなものだった。 『めぐみちゃん、お先に~』 松屋は勝ち誇ったように言った。 松屋は同じ職場であり、年上特権のおかげで彼女を名前で呼べる事を客の前でアピールするようにいつも上がっていく。 勿論彼女目当ての客はカチンと来るし、当然哲平も同じだ。 しかし露骨に彼女に手を出す人間はいない。 彼女は人妻だからだ。
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