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「全く、毎朝毎朝遅刻ギリギリまで寝てるなんて…。あんたを起こす私の身にもなってよね!」
「別に頼んでないんだけどなぁ」
「なんだとぉ!?」
今にも僕に殴り掛からんばかりの勢いで怒鳴り散らす彼女に、僕は今し方焼きあがったトーストを一枚渡すと、椅子に座った。
ご飯を上げると、途端に静かになるんだから、僕の妹って本当に不思議。
「あ、ありがとう…。て、ていうか、こんな呑気に朝ご飯食べてる場合じゃなくて、時間がもうヤバいんだって! 遅刻しちゃうよ!」
「大丈夫だよ。自転車で飛ばせば間に合うから。乗せて行ってあげるから大丈夫。そんな事よりほら、ちゃんと食べないと今日一日もたないぞ?」
「な、何よぅ。寝坊したの修でしょ? 少しくらい焦りなさいよ……」
「いやはや、このマイペースさが売りなもので。それよりも妹。髪が少し寝癖ってるぞ」
「私は妹って名前じゃないし、寝癖るなんて動詞はないよ!」なんて不機嫌そうに言いながらも、僕の渡したトーストをもふもふと美味しそうに咀嚼する彼女の髪の毛をぽんぽんと撫でてから、櫛を通して寝癖を直す。
年頃の女の子が、僕のせいで身嗜みを整えられなかったとなってはことだ。僕のお兄ちゃんライフに傷がつく。
「んしょ。こんなもんかな」
「終わった?」
「今日はツインテールにしてみました」
「そう、ありがとう」
僕はいつものように妹の髪を櫛でとかしてゴムで結んで、彼女の髪を不躾にいじる。
その時々の僕の気分で、その時々の妹の髪型を作るのが僕の日課になっていた。
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