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「あ、どうしよう。そういえば今日漢字の朝テストあるんだった!」
学校へと向かう道すがら、長い長い坂道を自転車で必死こいて駆け上がる中、
自転車の後部座席(あの金網みたいな部分)に涼しい顔で座っていた妹は、今思い出したかのようにそんな事を言った。
焦っているのか、僕の腰に回した腕に力が入り、若干苦しい。
「…諦めなよ。今更どうにもならない」
「軽ぅっ! 何その反応軽すぎでしょ! 少しくらい心配とかしてくれないの!?」
「あぁ、神よ。朝テストの存在すら忘れて遊び耽る妹の将来が、僕は不満でたまりません。あぁ、神。ああ神よ! どうか哀れな彼女を救いたまえ!」
「もう修なんて大嫌いっ!」
そんな事を言いながらも、自転車から降りる事もなく、僕に抱きついた姿勢を崩す事もない彼女を愛しく思いつつ、僕はペダルを漕ぐ脚に力を込めた。
…重いな。
「ねぇ、君少し太った……」
「死ねっ!!」
…全く。
僕の妹は、酷く短気だ。
そのくせ寂しがりやで、なのにもかかわらず強がりだったりしするし、憎まれ口ばっかり叩くし、でも冷たくするとすぐ拗ねるし、本当に、世話のかかる妹だったりする。
多分、あなたが文面から連想したのほど、良い妹では、ない。
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