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「あらあら、まあまあ、酷い顔だこと」
放課後、僕は顔をパンパンに腫らしたまま、こんな顔では部活など出来ないだろうということで、休部届けを出すために部室へと足を運んだところ、先に来ていた仙石先輩にはち合わせた。
タイミングが奇跡的なまでに最悪だった。
都合が悪い。不都合が良い。
全くいつもいつも、この先輩は僕が会いたくないと思った時に限って僕の前に姿を見せる。
存在自体が嫌がらせみたいな、そんな人。
他人に与えるナチュラルな嫌悪感こそが、仙石先輩のアイデンティティにして、レーゾンデートル。
僕はこの人が、結構苦手だったりする。
「せ、先輩…。今日は早いんですね」
「ん、まあね。何か高3のみんなは受験忙しいみたいだけど、俺と海老名はもう決まってるし、この時期受験勉強しなくて良いと本当に暇でさぁ」
「他の高3生が聞いたらリンチものですよ、今の発言」
「おっと、口が滑った。ちくんなよぉ?」
ははは、と愉快そうに笑う仙石先輩。ちなみに彼は高3。僕は高2。妹は高1で、みんな同じ部活、テニス部に入っていたりする。
しかしテニス部とは言っても、名ばかりのお遊び馴れ合い集団で、未だに僕はラケットすら持っていない。
よくよく考えてみると意味不明かも。
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