葉山翔『ヴァイオレット・スキッツォイド』

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葉山はイヤホンから流れる重く、暑苦しい伴奏を聞きながら待ち合わせ場所に向かう。道をひたすら東に進み、立川駅を通りすぎ、市役所跡地を超え、郵政施設の東側にあるコンビニ前に到達する。 葉山はコレを過去に7回行っている。 荻野弘子と会う時は決まってこの場所での待ち合わせだ。 理由は幾つかある。 ここが葉山の隠れ家に近いと言うのが一番の理由か…。 少なくとも葉山にとってはコレが一番の理由だ。 もちろん、荻野弘子にとっての理由もある。 彼女の家は小平市だった筈だ。 葉山は携帯を開き、時間を見ると、17時25分となっていた。少しばかりのんびりと歩きすぎたようだ。 コンビニ前の灰皿の傍らでタバコに火を点けると、黒い日産スカイラインGTRが喧しい音をたてて入ってきた。 運転席の女はサングラスをしている。 荻野弘子だ。 葉山はもったいないと思いつつも点けたばかりのタバコを灰皿に落とし、『秋山直樹』となってに乗り込む。いつものパターンだ。 そして挨拶替わりにいつものように 「相変わらずうるさい禁煙車だな。」 と言い捨てながら、助手席の足元に置いてあるLOUIS VUITTONだか何だかのバッグから茶封筒を取り出す。
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