ｸﾗｲﾑ･ｱｼｽﾀﾝﾄ

葉山翔『ｳﾞｧｲｵﾚｯﾄ・ｽｷｯﾂｫｲﾄﾞ』

「こんな俺の為にいつもすまない…。」
内心ほくそ笑みながらも申し訳なさそうな顔で、現金30万円が入った茶封筒を自分のバッグにしまいながら礼を言う。

これもいつものパターン。
葉山はこれを過去に七回繰り返した。
いつもの場所で待ち合わせをし、いつもの場所で茶封筒を受け取り、いつもの場所でレンタカーに乗り換え、いつもの場所で食事をし、いつものラブホテルに行く。
そして荻野弘子に30万円分の偽りの愛を注ぎこむ。

場所を変えないのは葉山の提案だった。
不倫に該当する二人の関係は下手に動かない方がいい。最小限のエリアに絞って行動すべきだと思ったからだ…。

そして今日も葉山は淡々とそれをこなしていく。