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今晩は火を焚かなくても周りがはっきり見えるほど明るい。月の形は完全な円形。星も数えきれないほど瞬いている。
キルトは月の形が変わるのを見るのが好きだった。雲一つない星空を見上げていると、あの中を遊泳しているような錯覚に陥る。
「ここにいたの」
大木に寄りかかり空を見上げているとふと声がかかる。声で誰かわかる。
リオだ。
「エクスシアが僕にいてほしくなさそうだったから」
「そんなことないだろ?」
「あるよ。何の話か知ってるもの」
エクスシアが定住せず旅を続けている目的をキルトは知っている。エクスシアは親を殺した機械を探しているのだ。キルトにとっては両親が殺されたのは物心つく前のこと。エクスシアほどの高ぶった感情はないが、復讐を止めろと言う気にはならない。
「キルトも機械を憎む?」
「僕の親を殺したのが機械だって言われたらいい感じはしないよね?でも……」
「でも?」
「僕はエクスシアを失いたくないんだ」
リオから目線をはずす。キルトは再び夜空を見上げた。
「だから本当はエクスシアに復讐なんてしてほしくない」
「でも止めないんだ」
「エクスシアの気持ち知ってるから」
キルトはふっと悲しい笑みを浮かべる。
「ケルブがメイスを連れて来なきゃ、メイスが機械の情報さえ持っていなきゃ、僕たちはこのまま旅を続けられたんだ。もしエクスシアが死ぬことになったら、きっと僕は君やメイスやケルブを恨む」
そう言葉にはしつつも、そんな話が無理なことくらい、キルトが一番よく知っていた。
エクスシアの憎しみは簡単に消えるものではない。だからケルブと愛し合えばいいと思った。ケルブとの子を生せば、エクスシアは復讐を諦めるのではないかと期待していた。
メイスたちの登場でその期待も淡く消える。
リオはキルトに恨むとまで言われたにも関わらず、まるで聞いていなかったかのように笑顔を振り撒いた。
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