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「キルトはなぜ機械が人間を襲うか知ってる?」
しかも唐突な質問。
「機械は人間が作ったものだってのは?」
「それは知ってる」
リオの意図が理解できず、キルトはじっとリオを見つめて次の言葉を待つ。
「少し退屈かもしれないけど昔話を始めよう」
退屈ではない。
リオの発する言葉は、何の抵抗もなくキルトに浸透していく。それはキルトにとって不思議な感覚だった。目も、耳も、できる限り彼を感じようと働く。
「ヒトはその昔、ヒトが如何に楽に快適に生きていくか追求した。その為なら他の種を犠牲にするほどに」
初耳だった。
昔は人が数えきれないほど多くいたが、ほとんどが機械に殺された、というのがキルトの知識の全てだ。
「ヒトは機械を造り出す。機械に自ら考える頭脳を与え、生活の管理をしてもらうようになる。何を食べるかも、どこに行くのかも、全部機械が教えてくれる」
「どうして………?」
「その方が楽で快適だからさ」
そう言われてもキルトには理解できなかった。
「ヒトは、もっとヒトの為に考え行動してくれる機械を造り出す。もちろん、決してヒトを害することない機械を」
「…矛盾、してるよ」
所詮リオの話は作り話か、と落胆するキルト。
もしその話が本当なら、キルトとエクスシアの両親は今でも健在だ。
「いいや、矛盾してないよ」
リオが真面目な表情でキルトを見つめる。刹那、キルトの心臓がドグンと波打つ。
「機械は人間のために考えるんだ。どうすればヒトはこれからも繁栄できるかってね。で、出た答えが、まずヒトという種はあまりに多すぎる、ということ」
「え!?ヒトが生きていくためにヒトを減らしたの?」
「正解」
リオがにっこり笑った。
その無邪気な仕草に、キルトはまた不覚にも不整脈を打つ。
「食糧問題と、他の種や環境に対する影響から見て、機械はヒトの為にヒトを殺したんだ。そうした方が種の保存ができるから」
信じられない。キルトはそう思った。心臓の鼓動は速くなる一方で、うまく息が出来ない。
ヒトがちょっと多いから自分の親は殺されたのか。また、そのためにエクスシアの心は復讐に捕われてしまったのか。
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