第二章 誕生

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「キルトはなぜ機械が人間を襲うか知ってる?」  しかも唐突な質問。 「機械は人間が作ったものだってのは?」 「それは知ってる」  リオの意図が理解できず、キルトはじっとリオを見つめて次の言葉を待つ。 「少し退屈かもしれないけど昔話を始めよう」  退屈ではない。  リオの発する言葉は、何の抵抗もなくキルトに浸透していく。それはキルトにとって不思議な感覚だった。目も、耳も、できる限り彼を感じようと働く。 「ヒトはその昔、ヒトが如何に楽に快適に生きていくか追求した。その為なら他の種を犠牲にするほどに」  初耳だった。  昔は人が数えきれないほど多くいたが、ほとんどが機械に殺された、というのがキルトの知識の全てだ。 「ヒトは機械を造り出す。機械に自ら考える頭脳を与え、生活の管理をしてもらうようになる。何を食べるかも、どこに行くのかも、全部機械が教えてくれる」 「どうして………?」 「その方が楽で快適だからさ」  そう言われてもキルトには理解できなかった。 「ヒトは、もっとヒトの為に考え行動してくれる機械を造り出す。もちろん、決してヒトを害することない機械を」 「…矛盾、してるよ」  所詮リオの話は作り話か、と落胆するキルト。  もしその話が本当なら、キルトとエクスシアの両親は今でも健在だ。 「いいや、矛盾してないよ」  リオが真面目な表情でキルトを見つめる。刹那、キルトの心臓がドグンと波打つ。 「機械は人間のために考えるんだ。どうすればヒトはこれからも繁栄できるかってね。で、出た答えが、まずヒトという種はあまりに多すぎる、ということ」 「え!?ヒトが生きていくためにヒトを減らしたの?」 「正解」  リオがにっこり笑った。  その無邪気な仕草に、キルトはまた不覚にも不整脈を打つ。 「食糧問題と、他の種や環境に対する影響から見て、機械はヒトの為にヒトを殺したんだ。そうした方が種の保存ができるから」  信じられない。キルトはそう思った。心臓の鼓動は速くなる一方で、うまく息が出来ない。  ヒトがちょっと多いから自分の親は殺されたのか。また、そのためにエクスシアの心は復讐に捕われてしまったのか。
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