第一章 受精

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 身体が重い。何もかもが億劫で、キルトは寝転びながらまぶたを閉じた。青い空が遮断される。  もっと詳しく言うなら身体全体が怠いわけではない。下腹部に痛みは集中している。まるで鉛の塊を腹に詰め込まれたみたいだ。  再び開いた目に飛び込んできた青と白が神経に障る。緑がさわさわと揺れた。 「キルト、これを飲みなさい」 「ナニソレ?」  青と白と緑のコントラストに割り込んできた女性が白い粒を差し出す。白い粒より上から覗き込む彼女のほうに目がいった。  闇を纏わせたような黒髪は彼女の豊満な胸が隠れるくらい長い。瞳は吸い込まれる黒曜石。肌が白いせいか唇が妙に紅く映える。  ここまで表現しなくても美人の一言で彼女の容姿は言い表わせる。  一方、キルトの髪は赤毛で容姿も美人とは言えない。せめて短い髪を長く伸ばそうとしているところだが、どうせ途中で邪魔になって切ってしまうのが落ちだということはわかっていた。 「薬よ。飲めば痛みが治まるわ」 「クスリ?」 「先人の知恵ってやつね」  あーん、と口を開けると彼女――エクスシアはキルトの口に白い粒を放り込む。続けて瓶に入った水を手渡され、キルトは上半身を少し起こして水と一緒に粒を飲む。  ちなみに手渡された瓶も先人の知恵で作られたものらしい。  先人の知恵――遠い過去、文明の発達と人類の過剰な分布でこのホシさえも滅ぼさんとしていた時代があったらしい。 image=38247459.jpg
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