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「彼ならあなたのために遺跡探索中よ。あたしの持ってた薬はあれで最後だから」
「そうなんだ」
おなかの痛みが引いたせいか、今度は股の間の布と月経の血が出る瞬間の何とも言えない気持ち悪さが気になった。
「ごめんね?」
「なぁに謝ってるの?あたしは重い方じゃないから薬がなくても大丈夫なのよ?」
「うん…でも他にも迷惑かけたから……」
「………?」
キルトが少し顔を赤らめた瞬間、エクスシアはキルトがなぜ謝ったのか思い当たる。
実はキルトは自分が病気だと散々騒いで、エクスシアとケルブに泣き喚きながら当たり散らしていた。
「事前にちゃんとした知識を伝えなかったあたしが悪いのよ。キルトの気にすることじゃないわ」
「……うん」
そうは言われてもやはり自分のとった行動は今考えても恥ずかしい。
「……ケルブ、遅くない?」
「まぁ……そう言われればそうかもねぇ。アイツ何考えてるかわからないけど、薪になりそうな枝でも拾いながら来てるんじゃないの?」
「エクスシア、ケルブにはちょっと冷たくない?」
「そんなことな……」
会話の途中でエクスシアの表情が一変する。柔和な笑みを浮かべていた口元は真一文字に結ばれた。木々が遮り視界の届かぬ方向をぎりっと睨み付ける。彼女の左手にはナイフが獲物を待つように光っている。
キルトも素早く起き上がり、エクスシアの右隣で構える。 二人が見つめる方向からかすかだが草を分け入りこちらへ迎う複数の足音を聞いての反応である。
機械か、野生動物か、稀ではあるが人間か……
こくりとキルトは生唾を飲み込んだ。どの選択でもあまり好ましくはない。
音は徐々に近づき、ナイフを握る手に力がこもる。二人の間の空気が最高潮まで張り詰めた瞬間――
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