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「ん?熱烈な歓迎っぷりだねぇ」
はたして───姿を現したのはケルブだった。
ニヤニヤとふてぶてしい笑みを浮かべ、こちらの緊張感で張り詰めていた空気を消し去る。
「往ね」
「むしろ僕たちの手でこの人の人生終わらせたほうがいいよ、絶対」
歓迎の台詞を吐くふたり。内容はともかくとして。
「ええ!?二人ともひどくねぇ?これが働いて帰ってきた父親に対しての台詞ですか?キルト!そんな子に育てた覚えはありません!」
「まさかあたしが母親役でアンタの妻じゃないでしょうね?」
「ち、違います!違いますからその刃物を首筋に当てるのはやめてください!」
エクスシアは一瞬のうちにケルブとの距離を詰め、左手のナイフの刃先を下から突き上げるようにケルブの首元に突き付けていた。どちらか一方が少しでも動けばケルブの首には刃が食い込むに違いない。正に紙一重。その無駄のない動きにキルトは見惚れてしまう。
エクスシアはケルブの首にナイフをぴたりとつけたまま、目線だけ背後に移す。その視線は鋭い。
「で?その二人は誰なの?」
エクスシアとキルトは複数の足音がした故に警戒したのだ。ケルブの後方には確かに二人の男が呆気にとられなからエクスシアを注視している。
「病院という遺跡でばったり会いまして」
「連れてくる必要性が理解できないわ。いつぞやの誰かみたいに女ってだけで近づかれたらこっちはたまんないのよ」
「うーん…否定はできないねぇ」
人間、愛と正義だけのために動くやつはいない。機械の襲撃から助けてもらったのがケルブとの出会いではあるが、彼はこちらが女だと認識してから助けてくれたらしい。つまりは下心があったわけである。
彼の目論みは失敗したが、それでもキルト達についてくるということは本気でエクスシアに惚れているのではないか、とキルトは思っていたりする。
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