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「昔の知り合いさ」
「…………」
「ハハ…連れてくる必要性がないって言いたいんだろ?」
ケルブの口調は軽いが、この間も二人の姿勢は変わっていない。
「エクスシアの旅の答えを知ってる」
「…………」
エクスシアはケルブを下から睨み上げ、暫くのちゆっくりとナイフを下げた。
「………余計なお世話なのよ」
「気が利く男と言ってほしいね」
ケルブは勝ち誇った表情を浮かべ、後方を振り返った。顎をくいっと動かし二人にこちらに来るように促す。
新参者二名は恐る恐るこちらに踏み出す。
この時点でようやくキルトから二人の顔が見えた。
一人はかなり細身の優男。年はケルブと同じか少し下に見える。ケルブの様な硬い髪質ではなく、柔らかい茶色に透けたサラサラの髪は彼の印象も柔らかなものにする。
もう一人は小柄な少年。年はキルトより少し上くらい。エクスシアと同じ黒髪だが、光の加減によって深い緑色を彩る。瞳も緑を湛えていた。
キルトは不思議と彼に惹かれる自分を感じた。
「予想以上の熱烈な歓迎でした。私はメイス。彼の昔の知り合いとやらです。こちらはリオ」
ケルブと年の近い方が口を開く。口調も容姿にたがわず柔らかいものだった。
「あたしは……」
「伺ってます。エクスシアさんにキルトさん、でしょう?」
ちらりと横目でケルブを睨むエクスシア。
肩をすくめるケルブ。
「もうすぐ日が暮れます。とりあえずお話の前に火を焚きましょう」
「賛成よ。ケルブが薪を拾ってくると思ってここで待ってたんだもの。食糧だってもう確保してある」
エクスシアとメイスはほぼ同時にケルブを見る。ケルブは二人を交互に見てひきつった笑いを浮かべる。
「つーか、メイスおまえ俺が拾ってないの知ってんのにこっち見てんじゃねぇよ!」
「そうでしたか?」
ひょうひょうとした態度をとるメイス。
「キルト」
エクスシアたちのケルブいじめを微笑ましく見ていると、横から声がかかる。
リオだ。
「よろしく」
差し出された手に一瞬戸惑うものの、キルトはゆっくりとその手を握った。温かかった。
にっこりと笑うその笑顔から目が離せない。
キルトはいつのまにか月経の気持悪さも、微かに残る鈍い痛みも忘れていた。目の前の人に惹かれる自分に驚きつつも、今までにない高揚感を感じていた。
ケルブ以外の男性に会ったことのないキルトにとって、それを言葉で表すのは容易なことではない。
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