第零章 そうだ、異世界へ行こう

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「さぁ~て、甘いもん貰いに行きますか!」 12月25日、クリスマスの夜の9時に、甘太はそう言って家を出た。 「甘太さん、もしかして箕川製菓のあのキャンペーンに……私も付いていった方がよさそうね……」 菜華は自転車を漕いでいく甘太を見て、そう呟くと、タンスの中にきれいにしまってあった青いローブを身に纏い、家を出た。 その頃、都内某所のヤクザの事務所では、青いチャイナドレスを身に纏い、茶色の髪を団子状にまとめ、飾りをつけている女性と、その手下と思われる男数人が、ヤクザの一味を壊滅させていた。 「ボス!そろそろ行かないト……」 「分かったワ!後はアンタ達に任せたヨ!」 手下の一人が女にそう言うと、女はそう言って外に出て、車に飛び乗って、箕川製菓へと向かった。 「異世界に行っテ、ワタシは異世界を救うのヨ~!」 と大声で叫びながら…… 女が車を走らせているその時、都内の工場では、金の短髪に金の瞳の外国人の青年が一人、黙々と作業を続けている。 男が腕時計をふと見ると、既に9時30分になっていた。 「あっ!このままじゃ遅れてしまう……工場長!僕、用事があるので帰ります!」 「そうか、お疲れ様。今日はクリスマスだったよな?まぁ、あと2時間ちょっとだが、楽しく過ごせよ!」 青年が工場長にそう言うと、工場長はそう言って、工場から出ていく青年を見守っていた。 そして、午後十時、その時間がやってきた。
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