マニュアル

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マニュアル

豆電球に救済を求めてしまうような日常に僕の焦りは行き場を無くした。闇が静かに光を殺していくだろう。冬、17時、目を閉じる、30分。僕の光を返して下さい。叶わなくても平気な願い一つ、6畳に浮かべる。 闇に喰われる まるで詩人のように無関係で無関心な言葉を並べてしまう。高校から作詞を初めてもう4年が過ぎた。途中で詩に転向したが結局帰ってきた。余りにも世界が広く、戦えるのは歌しか無いような気がした。小、中、高と頭が悪く、勉強など全くしなかった。そのかわり、これだけは欠かさずやっていた。そんなドキュメンタリーなこともなく、ずっとずっと勉強など要らない気がしていた。 はじめから。要らないよなんて言い聞かせた。 だから現在進行で頭が悪い。 知らないことが多い、専門的な事を何も知らない。武器はない。 平和主義者に成り下がった。 作詞を始めたきっかけはコブクロ、ゆず、19の歌詞に感銘を受けたから。簡単な理由だ。簡単過ぎる。笑えるな。彼らはほぼ変化せずに4年を積み重ねた。だけど僕は変わり果てた。イノセンスなんてどこにもなくなった。シンプルなんてつまらなくなった。そこからは帰ってこれないようだ、全く帰る気もないのだけど。 なぜ彼らは変わらないのだろうか。僕は不思議に思う。 ふと彼女の言葉を思い出す。 「変わらないものが愛しい、変わってしまうことが怖い、耐えられない」 僕は頷いて沈黙を渡す。いつもの流れだ。 車のヘッドライトが白いだけの壁を撫でるように流れる。 後部座席に寝転びながらトンネルを通過する景色。オレンジがリズムをとり、僕は先を予想して手をかざしたり引っ込めたり。 あの景色には確かスピッツが似合うんだ。楓とかYとか。 思い出す、色々と。 自分の部屋、豆電球。 記憶が待っているのかもしれない。思い出してもらえるのを。繰り返して行くのが正しいと言わんばかりに待っている。 オチのない話がずっと続いていく、現実が恋しくなる。光が欲しい。電気を付ける。 この部屋はただ部屋になる。想像を許さない物質なる。小説から漫画へ。恋人から配偶者へ。退化。 P.S. さっき電気をつけたとき世界を照らし出してしまう太陽の光量に驚いた。 そんな実りのない話、誰が聞くよ?
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