第一章~遭遇~

14/46
前へ
/320ページ
次へ
「確かにファンクラブが出来るだけの事はある。いい女だな、お前。」軽い調子で如月の容姿を褒める富士。 「ありがと。そう言う富士君も中々男前じゃない。富士君もスラブ系のハーフなんでしょ?」 富士の表情が驚きを示す。 「よく分かったな。俺もお前と同じでスラブ系との混血だ。出身はロシアだがな。」 「やっぱり~。一度、英語の授業の時に富士君が教科書を読まされた時に気づいたの。スラブ訛りの発音だったから、同郷かなって。でもロシア出身だったんだね。富士君は長い間ロシアにいたの?」 「ああ、長かったよ。十四歳まではロシアにいたからな。親父はロシア人だったが、お袋が日本人でな。日本語はお袋に習った。家の共用語はもっぱら日本語だったよ。」如月の質問に目を細め、懐かしいものを思い出すように答える富士。 たった一度富士の英語を聞いただけで、富士が混血であると見抜いたのだから、如月の慧眼は中々のものと言っていいだろう。ちなみに暁は富士が混血である事に気づかなかった。確かに富士の顔は彫りが深く、洋風な顔立ちをしている。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加