3人の訪問者

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 夏の匂いの残る9月。  まだ風鈴の音も、夏を満喫したりないというように、チリチリと鳴いている。  茅瀬(かやせ)めぐみ。23のごくごく普通のOLである。  彼女はいつもの様に仕事を5時で上がり、本日来たばかりのアルバイトの女の子に仕事のやりくりを教えるため、1時間の残業を命じられ、やっとの事でここ、7階建ての、23のOLにしてはかなり贅沢な、3LDKマンションの自分の部屋にたどり着いた。  広い部屋に明かりが灯る。 「ただいまぁ…って、誰もいないんだっけ。あ~あ、今日も何だかんだとやってたら1日が過ぎちゃった。ほんっと、つまらない毎日だわねぇ…」  そう独り言を呟き、着いて早々冷蔵庫の扉を全開し、昨日イヤというほど買い込んだビールを1缶取り出し、それを持ってテレビのある部屋へと向かった。  ソファーに腰掛け、側にあったリモコンでテレビのスイッチを入れた。  そして、ビール缶のプルトップをプシュッと爽快な音を立てて抜き、ゴクゴクと一気に煽る。 「ふぅっ、疲れた疲れた。ああ幸せ。ビールが美味しいっ。やっぱり仕事の後はコレが最高ねっ。さてと、今日は何か面白いニュースあるかしら?」  ピッピッと何度かチャンネルを変えていると、何やら騒がしそうな画面に目が止まった。  画面の見出しには、  『鷹崎財閥の御曹司、鷹崎 スバル失踪?!姿を消した理由とは?』  と、出ていた。  『ふぅ~ん。鷹崎財閥って、最近何かと噂の絶えない鷹崎コーポレーションの事よねぇ。そこの御曹司が家出ねぇ。はぁ~…、ったくいい気なもんよね!金持ち財閥の息子が何に不満があるってゆーのかしら。一般人の私達なんか、毎日毎日あくせく働いて一日の生活費稼いでるってのに。どぉせ私達の倍はタダで手に入るんだわ!あ~悔しいっ!そぉんなワガママ放っておいたらいいのよ」  そう言うなり、めぐみは立ち上がり、もう一度冷蔵庫の扉を開けると、今度はつまみを取り出した。  こうしていると、何だかとてもグウタラした女の様だが、見掛けによらず几帳面でしっかり者である。  言うなれば、『出来る女』の部類に入るであろうか。  そんな事はさて置き、つまみと二本目のビールを持って部屋に戻ろうとした時、ベランダの方からガタン!と物音が聞こえてきた。  ギクリとして一気に胸がざわめく。
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