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頬へ、目へ、唇へ指を這わせる。最後の別れを愛おしむように…。 そっと触れていく。 熱く溢れた血の温かさに思わず微笑みがこぼれる。 ぬるりと生温かい感触が濡れた手の甲に触れる。鼻を近づけて嗅いでみると、強い匂いがした。 ふと顔を上げる。 透明な景色の向こう側。星一つ見えない夜空を見上げた。 昏黒の闇。 白い街の灯。 まるで無数の蛍のよう。 冷たい…。 とてもとても冷たい…。 凍りついてしまったようなその景色に、はあっと息を吐きかける。 冷たい光が束の間、白く曇る。 なぜか誰かの温かい、柔らかな掌の感触を思い出す。
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