383人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「綾見澤さん、そっち側持ってくれるかな?」
「あいよー。」
あれから数日経った土曜日。
結局太平は何も言わないまま休日を迎えた。
何日かは綾見澤をベッドに寝かせ、自分が居間のソファで寝ていたのだが、綾見澤が申し訳ないと言った事により、急遽使っていない部屋を片付ける事になった。
勿論、提案したのは太平だ。この男、究極のお人好しである。
「なんか悪いな、アタシなんかの為に。」
一通り片付いた部屋の中央に小さいテーブルを置きながら、綾見澤は苦笑いで頬を掻く。
「全然、気にしないでくれよ。部屋も家具も余ってるからさ、使わないと勿体無いじゃないか。」
全く気を使った様子の無い太平の笑顔に、綾見澤は迷った。
このまま、話さないままで良いのか、と。
「…アンタさ、何も聞かないよな?」
空気を入れ替える為に窓を開けながら、太平はその言葉を背中で受ける。
「うん、誰だって聞かれたく無いこともあるでしょ?」
太平としては、「いつかは」話し合わなくてはいけなかった、と考えて居たので、然程気にする様子もなく言葉を返した。
最初のコメントを投稿しよう!