ある日の出逢い

18/22
前へ
/63ページ
次へ
綾見澤は口を開いたが、何も言うことは出来ずうつ向いた。 三番は綾見澤の肩に手を置きながら優しく言う。 「帰ろう?別れの時間くらいは作ってやるから。」 と、そう言った瞬間、三番は視界に人物を写し、綾見澤の手を引いた。 「綾見澤さん!」 「太平…。」 太平は息を切らしながら綾見澤と三番に走り寄り、三番の前に立つと、普段の穏やかな表情からは想像もつかない程、きつく三番を睨んだ。 「…綾見澤さんから離れろ。」 何度目になるか解らない溜め息をつき、三番は軽くこめかみを押さえた。 また二番が余計な事をしたに違いない、と。 「解った、離そう。だが…」 三番は手を離す、太平はすぐに綾見澤の手を引き、三番と綾見澤の間に立った。 「一番、いや、私達がどういう存在か、知って貰う必要はあるようだ、な!」 三番は言うと同時に、手に持った小石を投げる。 それは太平に向かい真っ直ぐに飛ぶ、と表記しても、到底人間の目に追えるスピードでは無く、まさに瞬く間、と言った感じだ。 にも関わらず、太平は回避した。 いや、綾見澤が太平を抱え跳んだのだ。 それも一瞬にして、数メートルの距離を。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

383人が本棚に入れています
本棚に追加