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「なっ!?」
勿論、太平が混乱したのは言うまでも無い。
男尊女卑とは言わないが、綾見澤が女性である以上、男である自分が守るのは当然だと思っていたし、実行する覚悟もあった。
だが実際はどうだ?
守るべき綾見澤は、太平の知る「人間」の能力を遥かに凌駕して見せた。
普通はここで降りる。自分が関わって良い領域では無いと自重する。
しかし、太平は
「このまま逃げよう!」
と、抱えられた不格好なまま叫んだ。
「なっ!?逃げたってな!場所も名前も割れてんだ!だったらここで…!」
「駄目だよ。」
「…っ!」
今度は綾見澤が鑪を踏んだ。
何があっても守る。
そう決めた心を軽々と揺さぶられた。
それは、太平が優しい、いや、優しすぎる程の笑顔を自分に向けていたからだ。
「戦うなんて最後の手段だよね?だから、今は逃げよう。」
「分かったよ!」
綾見澤は吐き捨てるように返事をし、一度三番を睨み付ける。
三番は軽く肩を竦め、やれやれと首を振った。
「今は追わない。だが、明日もう一度来る。その時までに決めておけ。」
太平の視界は高速であらゆる物を写す。
やがて止まったのは、夕日が良く見える公園だった。
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