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住宅地を少し抜ける。
歯抜けのように、まばらに空き地が目立つ郊外に、太平の自宅はある。
狭い庭付きの二階建て。
それこそが太平の自宅にして、両親から継いだ唯一の遺産だった。
太平は女性を背負ったまま器用に鍵を開け、靴を脱いで玄関から直ぐの部屋に入る。
ベッドと本棚以外に何も無い簡素な自室は、主を迎え、少しばかり生活の色を取り戻したように見えた。
太平は女性をベッドに寝かせると、スーツのジャケットだけを脱ぎ、ネクタイを弛めて洗面所にタオルと桶を取りに向かう。
桶に溜まる水を見ながら自問する。
どうして俺はこんな事をしたんだろう?と。
答えが見えない程、極自然に女性を運んで来た自分に自嘲しながら、水を溢さないよう慎重に部屋に戻った。
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