ある日の出逢い

6/22
前へ
/63ページ
次へ
「アンタ、敵じゃ無いんだな?」 女性の問いに、多分ね、と苦笑しつつ答え、 「俺は大友太平、君は?」 と問返した。 女性は答え難そうにしていたが、たっぷりと渋い顔をした後、小さな声で言った。 「綾見澤、下の名前はねぇ。けどアタシは一番だから『いち』とか『はじめ』って呼ばれてた。」 困ったのは太平、何か事情があるだろうな、とは思っていたものの、自分の想像の限界を容易く越えられて辟易する。 が、それを顔には出さず笑顔のままで言った。 「それじゃあ、綾見澤さん?お腹減って無いかな、俺はこれから飯にしようと思ってたんだけどさ。」 深く聞くことは、何かタブーに触れそうな気がしての軽いスルー。 綾見澤は、いや要らない、と言おうとしたのだが、まるでマンガかアニメのようにタイミング良くお腹を鳴らし、太平を大いに笑わせたのだった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

383人が本棚に入れています
本棚に追加