ある日の出逢い

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*** 「それじゃ、綾見澤さんは家出してきたって事?」 まともに料理の出来ない太平が、たまには作ってみようと思い出来上がったスクランブルエッグ入りチキンライス(元はオムライスになる予定だった)を口に運びながら、太平は目の前で3杯目を口一杯に頬張る綾見澤に聞いた。 端的な説明をすると、綾見澤は元居た所で毎日窮屈な生活をしていて、それに加えまるで実験動物のような待遇を受けていた事に、とうとう堪忍袋の緒が切れ飛び出して来たと言う。 「色々、大変だったんだな…。」 安易に同情の意を示す事は、相手に対する侮辱にしかならないと分かっていても、思わず声に出てしまった。 自分なら、耐えられそうも無い。 「ま、出てくる時にニ三人ぶん殴ってきたからな、ちょっとはスッキリしたぜ。」 ある意味で男より男らしい綾見澤を見て苦笑いしながら、太平は催促されるまま四杯目のご飯をよそおうとして、既に食料が底をついてしまった事に気づく。
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