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セックスのときには毎回「気持ちいい」って言ってあげたし。
あの臭いものだって毎回ちゃんとお口にくわえてあげたのに。
お料理だって頑張って勉強した。
なんだって言うの。これ以上何をすればいいの!
エリカは18人目の彼氏と別れた後、いつもするように、
自分の首をロープで巻きつけていった。
片方のロープをドアノブにくくりつけて、もう片方を首に巻く。
体を傾けていくと首が絞まる単純な仕組みだ。
ロープに体重を加えていくにつれて、
エリカの意識がだんだんと遠のいてきた。
わたしがいったい何をしたっていうの???
エリカは遠のく意識の中で考えた。
いつかずっと幸せになれる時は来るのかな。
出会いがあれば別れがあるっていうけど、
そんなんじゃ一生地獄じゃない。
誰か助けてよ。
私は一生ひとりぼっちなの?
・・・エリカは体重を加えるのをやめた。
危ない。
あと少しでもこの状態でいたらほんとうに天国に逝ってしまう。
涙と鼻水と涎をラルフローレンの洗いたての真っ白なタオルで拭き取った後で、
エリカは外のベランダへ出た。
今夜はとても寒いけど月がとってもきれいね。
エリカは、白い息を吐き出しながら、
かつてとても美しい月の歌を歌った男がいたことを思い出した。
その男の名はタカシと言った。
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