エリカの場合(1)

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セックスのときには毎回「気持ちいい」って言ってあげたし。 あの臭いものだって毎回ちゃんとお口にくわえてあげたのに。 お料理だって頑張って勉強した。 なんだって言うの。これ以上何をすればいいの! エリカは18人目の彼氏と別れた後、いつもするように、 自分の首をロープで巻きつけていった。 片方のロープをドアノブにくくりつけて、もう片方を首に巻く。 体を傾けていくと首が絞まる単純な仕組みだ。 ロープに体重を加えていくにつれて、 エリカの意識がだんだんと遠のいてきた。 わたしがいったい何をしたっていうの??? エリカは遠のく意識の中で考えた。 いつかずっと幸せになれる時は来るのかな。 出会いがあれば別れがあるっていうけど、 そんなんじゃ一生地獄じゃない。 誰か助けてよ。 私は一生ひとりぼっちなの? ・・・エリカは体重を加えるのをやめた。 危ない。 あと少しでもこの状態でいたらほんとうに天国に逝ってしまう。 涙と鼻水と涎をラルフローレンの洗いたての真っ白なタオルで拭き取った後で、 エリカは外のベランダへ出た。 今夜はとても寒いけど月がとってもきれいね。 エリカは、白い息を吐き出しながら、 かつてとても美しい月の歌を歌った男がいたことを思い出した。 その男の名はタカシと言った。
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