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え……?
急に真面目な調子で尋ねられたその質問に、俺は言葉を詰まらせる。
詰まらせるというか、焦って言葉に出来なかった。
ちょっとの間をおいて、ようやくつぎはぎではあるが口が回るようになる。
「ど、どうって、別にどうもこうも……。ミクは、そうだな、家族みたいなもん……かな。なんというか、兄妹みたいな?」
「それ、本当……?」
「あ、あぁ」
「そっか、『兄妹』か。……『姉弟』の間違いじゃない?」
慌てた様子の俺を落ち着かせようとしてくれたのか、さっきと同じ笑みで茶化すように言う紗季奈。
尋ねたときの真面目な感じはどこにもない。
「いや、さすがにそれはないだろ。……多分」
「どうだろうね。結構ミクちゃんの方がしっかりしてるとこあるしなぁ」
まぁ、確かに否定は出来ない。
だがそれは、自分の意志で物事を判断するようになってきているということだ。
つまり少しずつ本当の人間に近付きつつある。
ロボットとしての能力も失いつつあり、本格的に人間へと──。
「あ、そうだ紗季奈。お前にはまだ話してなかったよな」
「ん? 何が?」
「いや、実はミクのことなんだが」
俺は紗季奈に最近気付いたミクの変化を話した。
つまり、教えたはずの料理を忘れていたことだ。
故障やバグかもしれない。
でも人間に一歩近付いたと見なせるのではないか。
そんな胸の内を、話してみる。
「んー、なるほどねぇ」
腕を組むようにして、少し考える仕草をする紗季奈。
「確かにそれは安易には見逃せないね。精巧な機械ほど故障したときのダメージは大きいものだし」
「だよなぁ」
やはり、紗季奈もミクの変化を簡単には喜べないらしい。
あんなことがあった以上、最悪を想定してしまうのは仕方ないと言えば仕方ない。
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