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紗季奈を送り、そこでミクは浴衣を着替え、家に着いたのは夜10時を少し回った頃だった。
「「ただいまー」」
二人で声を揃えて玄関をくぐる。
さすがに疲労感もピークに達していたので、脱いだ下駄を揃える気にはならなかった。
そしてそのままミクはソファーに倒れ込み、俺は椅子にどっかりと腰を下ろした。
ミクに至っては、まさにバタンキューといった様子である。
「つ、疲れましたー……」
「あぁ、お疲れ」
あれだけはしゃぎ回れば、そりゃあ疲れただろう。
まぁ、いろいろあったが、見ているのも眩しいくらい楽しんでるのがほとんどだったし。
俺も慣れない下駄を履いて歩き回ったのは、思った以上に身体にキているようだ。
足がピクピクしているのが分かる。
夏休みということもあって、普段にも増して運動不足だし、疲労感も三割増だ。
でも、よく考えてみれば、この疲労も可愛く思えるようなイベントが、この先待ち受けているんだった。
そう、体育祭である。
以前体育祭は夏休みにあると説明したが、先日その日程が公表されたと紗季奈から連絡があった。
日程は、9月2日、日曜日。
今年は、9月1日、2日が土日であるため、そこを利用するようだ。
それを思うと、今から気が滅入る。
完全なインドア派の俺がスポーツなんて、得意な訳ないし。
自分の所属するチームの足を引っ張らないようにくらいは、活躍したいのだが……。
うーむ。
「なぁミク、前言った体育祭のこと──」
俺がそう言いながら目をやると、ミクは。
それはもう気持ちよさそうに、ソファーで寝息を立てているのだった。
……。
沈黙と、静かな寝息。
まぁ、いいか。
自室から持ってきた薄手の毛布をミクにかけてから、俺は自室のベッドに倒れ込んだ。
何も考えることなく、本能のまま意識はゆっくりと闇へと落ちていった。
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