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そして、その日の夜。
俺とミクが晩飯を済ませ、ミクが眠りについた頃。
俺のもとに一通の電話が来た。
ディスプレイに映った名前は、紗季奈だ。
「もしもし」
『あ、こーちゃん? ごめんね、こんな遅くに』
時間で言えば0時を少し回ったくらいか。
まぁ、俺はだいたい毎日起きている時間ではあるが、紗季奈は気を遣っているのかいつもより小声で話す。
「いや、いいよ。ミクは寝てるけど」
声のトーンを紗季奈に合わせるように落とし、ベッドにごろんと寝転がってから言った。
普段ミクは遅くとも23時くらいには眠ってしまうのだ。
『うん、知ってる。だから今電話したんだ』
「……?」
ってか知ってるのかよ。
自分の就寝時間についてなんて話した覚えはないんだが。
俺のプライベートがどこまで紗季奈に漏れているのか、早急に確認する必要があるのかもしれない。
まぁそれは今いいとして(いや、全然よくないけど)、となると話の内容は。
「ミクには内緒の話か?」
『うん、ま、有り体に言えばそんな感じかな。雰囲気を重視するなら、作戦会議って感じ? いや、密会の方が様になってるかな』
受話器越しで楽しそうに、そしてそわそわした様子で語る紗季奈。
どうしてそんなノリノリなのだろう。
まったく話の見通しが立たない。
『要するに、昼間3人で話してたときにこーちゃんが考えてたことと同じだよ』
俺が考えてたこと?
えーっと、昼間の話というと、ミクの誕生日の件だろうか。
あのとき考えてたことねぇ。
うーむ。
「……あ」
そうだ。
その話のとき、考えてたことと言えば。
「誕生日プレゼント、か?」
『ピンポーン、その通り』
「よく分かったな、俺がそのこと考えてるって」
なんとなくね、と軽く流す紗季奈だが、なんとなくで思考が読めるのか。
まったく恐ろしい奴である。
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