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「それで、誕生日プレゼントがどうしたんだ?」
一人で盛り上がる紗季奈を放り尋ねると、わざとらしく拗ねたように、ちぇっ、と言ってから、
『もうちょっと乗ってくれてもいいじゃん。このわくわくが伝わんないかなー』
「伝わってるから落ち着いてんだよ」
『あはは、そうだろうね。つまり私が言いたいのは、サプライズで何か贈ろうよって話』
ほほう。
それは確かに多少わくわくするのも分かる。
紗季奈の提案はこうだ。
ミクに前もって誕生日プレゼントと明言して渡すものと、それとは別に渡すものの二種類を用意しておく。
一つの方に気を向けてさせていて、本命はもう一方という算段である。
『囮の方はあらかじめ何が欲しいのか聞いて、それを渡せばいいと思うよ。まるまる隠して変に怪しまれたくないし』
「そういうことなら、そっちについて明日にでも聞いとくよ。でも、もう一方の本命は?」
ここまで手の込んだことをしているのだから、相応のものを考えなければならない気がするのが、なんとなくプレッシャーだ。
これでミクが欲しいものに、高級アクセサリーとか言ったらどうしよう。
財布への打撃も痛いが、それを超えるものをサプライズで用意出来るだろうか。
まぁ、あの性格のミクが高級アクセサリーを欲しがるとは思えないけど。
『本命はね、一応考えてはいるんだ』
「そうなのか。で、何なんだ?」
『んー、でも、この案はさ、あくまでも一例だよ? 他にも幾つか考えてあるし、これに固執する必要もないし』
……?
紗季奈にしては、いやに歯切れが悪い。
遠慮……いや警戒か?
『それに、他ならぬこーちゃんが納得して決めてほしいし、無理強いさせる気もないから』
「らしくないな、とりあえず言ってみろよ。俺が嫌かどうかはそれから決める」
『……そうだね。えとね、私の案って言うのは』
こーちゃんが、ミクちゃんに歌を作ってあげることだよ。
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