夏休み~第四週目~

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目が覚めたのは、時間的にはもう昼と呼べるくらいの時間だった。 タイマーでエアコンが切れていたためか、部屋の中はひどい熱気が立ち込めている。 身体も汗をべっとりとかいていて、服が張り付いて気持ち悪い。 とりあえず俺はシャワーを浴びるべく、身体を起こし風呂場に向かった。 全身の汗を流し、ふぅ、と一息。 「さて、ミクに聞いとかないとな」 昨日の電話を受けてから、いろいろと考えてみた。 紗季奈の案、つまり、曲のプレゼントという案を受け入れるかどうか。 実際のところ、紗季奈はどんな気持ちでこの案を考えたんだろう。 別にこの件に関して、俺が紗季奈の内心を考慮して結論を出す必要はないと思う。 あいつもそんなつもりで言ったのでは無いだろうし、単純に俺がそれを受け入れるか否かの二択だ。 だが、気になるものは気になるのも事実。 というループにハマったお陰で、こんな時間に起きたというわけだ。 しかし結論は出した。 決心も済ませた。 「おーい、ミクー?」 シャワーを済ませて部屋着に着替えて、肝心のミクの姿を探す。 サプライズ計画の前段階として、ミクの欲しいものを聞いておかなければ。 ……? おかしい。 ミクの姿がどこにもない。 名前を呼びながらすべての部屋を回ったが、それでも見つからない。 買い物にでも行ったのだろうか。 書き置きなども無いのが少し気になるが、まぁ有り得なくはない。 仕方ない。 この際今の間に連絡を先に済ませてしまおう。 携帯を取り出し、着信履歴の最新の番号にかける。 『もしもし、こーちゃんおはよー』 「おう、おはよう。早速で悪いが、昨日の返事だ」 しっかりと息を吸ってから。 「とりあえず、受けることにするよ。どこまで出来るかわからんが、やってみる」 『……そっか。えへへ、ありがとう』 ぐすっ、と、鼻をすする音。 おいおい。 あろうことか紗季奈は、電話口で泣き出していたのだった。
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