夏休み~第四週目~

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「応援してる人ね……」 自分にそんな人がいるとは、全くもって考えたこと無かった。 俺自身に応援する人がいなかったから、まぁ当たり前といえば当たり前だが。 しかし、今の気分は悪くない。 紗季奈の提案を受けてよかったと、本心から言える。 何度も言うが、紗季奈の意見を尊重したとか、そういうことでは決してない。 あくまでも俺自身が考えて、俺自身が結論を出したんだ。 今後俺は、そういう道に入ることは無いと思う。 親父と向き合うとは決めたが、進路を変えることが出来るとまでは思っていない。 だったらある意味、これは俺の最初の一作であり最後の一作になるだろう。 そんな作品が存在してもいいなら、俺はそれをミクや紗季奈に持っていてもらいたい。 そうすれば、俺は今後も自分を見失うことはないと思う。 少しこじつけじみているが、これが俺が出した答えだ。 しかし曲作りのなんたるかは無知に近いので、これから大変だろうけど、反面楽しみでもある。 ミクがどんな顔するのか、それもまた楽しみだ。 ……っと、そういえば、ミクのいる場所を紗季奈に聞けば良かった。 電話の感じでは、そっちにいるような雰囲気は無かったが、もしかしたら何か知っているかもしれない。 まぁ、わざわざ電話する必要も無いだろう。 俺の保護者のような目が無くても大丈夫なほど、ミクも立派なひとりの人間だ。 ガチャッ。 そのとき、玄関の方で、扉の開く音がした。 ほら、思った通りだ。 そんなふうに考えた俺は、そのままリビングのドアが開くのを待つ。 ガチャッ。 再びそんな音がして、ドアが開く。 おかえり、なんていつもの調子で言おうと目を向ける。 だが──。 「な、なんで……!」 おかえり、なんて、言えるわけもない。 そこにいたのは。 「なんだ、私がここにいるのが、そんなにおかしいか。ここは──」 私の家だ。 そこにいたのは紛れもなく、俺の親父。 白石竜造(シライシリュウゾウ)。 それと、後からもう一人がドアをくぐって来た。         ・・ いや、性格には、二人だ。 そいつが両手に抱えているのは、他でもない。 まるで、眠っているかのように目を閉じている、ミクだったのだ。
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