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角に小さな公園のある十字路を右へ曲がり、3つ目の角をさらに右へ曲がる。
すると、その通りから向かって右側に消火栓が備え付けられている。
それが僕の家の『目印』だ。
――やっと着いた。
所々ガタはきているが、築25年のこの白く小さな一軒家からは僕が過ごしてきた18年間の面影を感じる。
自分の生家を目にし、僕はここに来て初めて安堵した。
きっと父さんと母さんが僕を待っている…なぜかそんな気がする。
ただそんな気がするのだ。
触り慣れた真鍮(しんちゅう)のドアノブに手をかける。
ガチャガチャッ。
鍵が掛かっている。
しかし、どうやら中に人が居るようだ。
テレビの雑音が扉の向こう側からかすかに聞こえる。
「母さん!居るんだろ!開けてくれ!」
僕はドアの向こうに居るであろう母親へ大声で呼び掛けた。
しかし、返答は無い。
それならばと、扉から少し離れたところにあるインターホンを鳴らしてみた。
このインターホンは、室内から受話器で応対出来ないただの呼び鈴であるため、いやがおうにも来訪者への応対を直接しなければならないのだ。
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