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「さいしょはグー!じゃんけんぽん!!」
太い声が狭い部室に響く。
「よっしゃ勝ったぁ!!」
アイスを二本持って晴れやかに笑ったのは、一年生の男子だった。
「負けた…」
対して、意気消沈している、三年生をはじめとする上級生の男子たち。
…ほんっと子供なんだから…。
…ちなみに、今なにをしているのかというと、江副先輩が差し入れに持ってきてくれたアイスの残りの争奪戦である。
「変わらないな、みんな。」
江副先輩がしみじみと言った。
―江副先輩は今年の春この学校を卒業し、同じ系列の大学に進学した。
だから、なかなか会えないのが実状である。
「でも…ああ見えても、みんな寂しがってるんですよ?」
まだ騒いでいる男子(しかもなんか一発芸始まった)をよそに、自分自身も寂しい笑みを浮かべて、上山が言う。
「じゃあ、君も?」
「!!…ええ、まぁ…そりゃあ…」
赤面して、どんどん声を小さくしていく上山。
その隣の江副先輩は、人の良さそうな笑顔のまま。
…うっわ確信犯……。
とかなんとか私が思っている間にも、二人の甘々モードは加速していく。
「上山さん食べてるのってバニラ味?」
「はい」
「美味しい?」
「は…………
「……甘い。」
言葉を失った上山の目の前には、江副先輩のどアップ。
「な、なななななっ!何してんですか!?」
「何って、味見?」
あのー…それ、世間で言う間接キスですから。
ていうか私達の存在忘れてません?
ほらほら、恋歌ちゃんも真似しようとしないの。石崎君が後退ってるよ。
ねぇみんな、
お願いだから、正気に戻って?(あ、恋歌ちゃんはいつもと変わらないか。)
早くエアコン直さないと駄目だ、と強く感じた夏の日でした。
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