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「―――いや。お互い、つまんねえ相棒を引いちまったな」
「…そうね。けど、私のはつまんないっていうより、扱いづらいだけだったかな」
「違いない。お前のような女が相棒だったら言う事はなかったんだが―――生憎、昔っからいい女とは縁がなくてな。
まったく、こればっかりは何度繰り返しても治らねえみてえだ」
青い槍兵は自嘲するように笑う。
「……さあ、早く行け。こいつは俺が連れて行く。
―――お前は、お前の相棒のところに戻らないと」
立ちつくす少女に先を急かした。
その手には火のルーン。
「―――――――」
決意を悟って、少女はランサーに背を向ける。
「―――さよならランサー。短い間だったけど、私も貴方みたいな人は好きよ」
大広間へ駆けていく。
「―――は。小娘が、もちっと歳とって出直してこい」
呟いた言葉は、心底愉しげだった。
そして部屋は炎に包まれる。
業火はランサーの体を焼き、主だった男の遺体をも焼き払っていく。
「最後はそれなりに愉しめたな。―――さて、逝くか……」
朱色の槍も青い甲冑も、空嘘の幻のように、炎の中に消えていった。
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