第零章~始まりと終わり~

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そこは暗闇のなか。 どこかわからない。 そんななか、声が聞こえてきた。 「なにを望む」 周りを見るが姿はない。 「なにを望む」 まるで山彦のように反響し、頭に染み付いてくる。 ランサーはその声に警戒しながらも答える。 「―――そうだな。もっと強えヤツと戦いてえ」 その答えに満足したのか、声の主は 「その願い叶えてやる」 そう言い放つと暗闇から姿を現した。 むしろ、浮かび上がったと表現すべきか。 ランサーは槍を構えながら考える。 『あの顔……どこかで…』 姿を現した声の主は、体中にペイントがされており 赤い布を体に巻いていた。 「そう警戒すんなって。せっかく願いを叶えてやるってんだからよ」 ケタケタと笑いながら言う。 「解せえな。まず手前は何者だ。聖杯戦争にはいなかったはずだ!」 声の主は答える。 「何者か、か…アヴェンジャーて名のっとくかな。それとたしかに今回の聖杯戦争にはいないぜ」 「―――今回だと?じゃなにか。手前は前の聖杯戦争に出てたっていうのか!」 「おしい!前々な。さて、質問タイムはやめて本題に入ろうぜ。」 アヴェンジャーが言い終わると同時に、黒い孔が出現した。 「俺はとあるヤツに、お前の望みを叶えてやってほしいと頼まれてな。 てなわけで~。さっさと入ってくれよっと」 アヴェンジャーはそう言うランサーの前から姿を消し、後ろから表れた。 ランサーを押して、ランサーを孔に沈める。 「くそ!!体が動かねえ!どうなってやがる……!!」 そしてランサーの意識が遠のいていく。 薄れゆく意識のなか、アヴェンジャーが言う。 「あと伝言だ。 ランサー、貴方を取り戻すことができなくて、すみませんでした。 私はやはりマスター失格です。これは私のせめてもの罪滅ぼしと思ってください。 貴方が何を望むかはわかりませんが、幸せになってくださいよ。約束です。 だそうだ」 その言葉は、ランサーの消えゆく意識でもはっきりと聞き取れた。 「バ…ゼット……」 そこで彼の意識は途切れた。 「さてと。俺も退散するとするかな。愉しめよ、ランサー」 アヴェンジャーはそう言うと、暗闇のなかに消えていった。
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