第二十五章~囚われの翔と一族の悲願~

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 「違う……?」  恵風に問われて、湍水は言いたかったことが解った。  「私も、国王と王家を信じていなかった。いや、今も信じきれていない。けれど、父は……信じたい。私の父・泉水は、若き主君に苦言を呈して来ました。それが、現国王には、煙たかったのでしょう。一時遠ざけられました。けれど、最近になり、現国王は、自身の方が誤りだったと気付かれて、父を重用し始めました。ただ……」  湍水は翔のことで頭がいっぱいだったが、思い出した。今、この国は大事に至っている、と。  「ただ?」  「現国王は、心の病に侵されたと、父は言っていました。そして、その父も自分の欲に負けた愚か者に刺されて動けないのです。」
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