―序章―

2/6
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
赤い夕日が目にしみる頃、 とある山のてっぺんに男と女がいた。 「キレイね…」 「ああ、そうだな。」 「こんなにキレイな景色は 生まれて初めて…」 「…」 「って、ここはベタでもいいから 「君の方がキレイだよ」 とか言ってよ。」 女がプンプン、軽いノリで怒っていると、 男は答える。 「この景色は見慣れた…」 「え?ここに来たことあるの?」 「…あぁ、忘れるほど昔にな。」 それから何年も何年も時が過ぎ、 男と女には息子と娘、孫までできている。 そんな2人、庭でお茶をしながら昔話に夢中になっていた。 「あの時の夕日は 本当にキレイだったわ… 今でも忘れないくらいにね。」 「…そうだな、あの夕日も 今となっては体に鞭を打ちながら 山を登らないと見れない。 歳とは恐ろしいものだ。」 ふと、女が男に聞く。 「そう言えば、 アナタがあの夕日を初めて見たのは いつ頃のことなの?」 「ん?あれは確か… ハッキリと覚えてないが、 前の前だから… 軽く100年は過ぎているな。」 「…へ?」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!