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自分でもどうしてかはわからない。 気がついたら、彼女はそこにいた。 例の部屋から出て随分と歩いたのに不思議と疲れは感じない。 うごめく死者に埋め尽くされた街の光景には少々飽きを覚えていたが、ただそれだけだった。 ただし、どうしようもない飢えのみが少女を突き動かしている。 (・・・もうだめだ) 収まらない凶暴な衝動に耐えきれず、駐車場でとうとう座り込んでしまう。 「・・・噛み、たい」 紅が引かれたような、赤い唇が動く。 「・・・を、噛みたい」 少女の呟きは、風に吹かれて消えた。 そこへ、カツカツという足音とがらがらという台車を転がすような音が聞こえてきた。
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