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―――有希の笑顔って一度見てみたいと思わない?
ハルヒのこんな言葉が、今回の話の発端となる。
「長門の笑顔、か?」
昼食の時間、ついさっきまでは春が近づくのを思わせるような、少し温かい日差しの下で眠っていたハルヒが急に言ってきた。
「そうよ、有希の笑顔。」
「……あのな、事の発端がよく分からないのだが。」
そうだ、なんでそんなことを急に俺に問いかけてくるんだ。
長門の笑顔を見たければ直接長門に言えばいいと思う。
「うん、今日の弁当はいつになくうまい。それが今の俺の欲求を満たしてる。すまないが、俺は何もやる気がおきん。」
「キョン、有希の笑顔を見たいと思わないの!?」
「さあな、俺は読書をしている無表情の長門で十分だ。」
それに俺は去年の年末に普通の女の子版、長門をこの目で目撃したんだよ。
俺はあの表情で十分だと思った。
「逆に訊くが、なぜハルヒは決して手に届かなそうな希望を抱く。」
「えっ、それはね……。」
おっと、さっそくハルヒの口元が止まった。さて、この時間……何を考えているのか、少しかわいらしい表情を見たかったのだが、俺はこの後絶対に食えないだろう昼食を普段より早めに食べておいた。
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