弐~動き出した終末~

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刻一刻と変わりゆく空を見ながら、七星剣の名を持つ少年は呟いた。 『少年』とは言っても、周りの人間の扱いは大人と一緒だったが。     アレックス「鳥はいいよなぁ…めんどくさいことなんか考えずに飛べて…。」     少年の名はアレックス=グランシャリオ。 この国の皇帝、ルドルフ=グランシャリオの第二皇位継承者としてこの世に生を受けた。 つまり、彼には兄がいるのだが…。     ジェイク「アレ、またここにいたのか。」 アレックス「兄さん…見つかったかぁ。」     彼がアレックスの兄、ジェイク=グランシャリオ。 この国の正当皇位継承者。     ジェイク「また空を見ていたのか?」 アレックス「うん。鳥になりたいなぁって…どこか知らないとこに飛んで行きたいよ。」     ジェイクは呟くように言った。     ジェイク「鳥だって、翼を休める木が見つからないことには地上では生きられない。翼を持ったことを後悔することだってあるかもしれないじゃないか。」 アレックス「ん~。俺には難しいことは分かんないけど、ないものねだりってことなのかなぁ…。」     兄さんがこの国の皇帝になることを俺が羨むようにね。 アレックスは心の中で繋げた。     ジェイクはアレックスにとって、目の上のたんこぶであり、自慢の兄であった。 次期皇帝を妬む一方で、その聡明さや強さは憧れでもあった。 剣でも勉強でも敵わない。 唯一、魔法だけはアレックスに若干分があったが。 まさに、皇帝になるために生まれたような兄。 自分が2番目であることを思い知らされながらも、兄を誇っていた。     アレックス「兄さんは凄いよなぁ…なんでも出来るんだもん。」 ジェイク「アレ…なんでも出来るってことは、なんにも出来ないってことでもあるんだぞ?」     ふと、ジェイクは遠くを見つめて言った。 アレックスには、兄の言うことが分からなかったので、ただ頷くしかなかった。     ジェイク「さぁ、城に戻ろう。サーバインが探してたぞ。」 アレックス「げっ。今日の稽古をサボったのがバレたかな…。」     アレックスは、兄に連れられて鬼…いや、教育係の待つ城へと戻っていった。     この国の平和が壊されるのはもう少し後のことではあるのだが、アレックスはそんなことは思いもしていなかった。
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