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「寒いねぇ。」
「うん、寒い。」
肌を刺すような、冷たい空気。
11月も下旬の今日は、今年最後の花火大会。
それに僕らはやって来ていた。
こんな季節に、しかも河川敷で行われるので、かなり冷える。
だから、コートを着てマフラーを巻いて、しっかり防寒。
始まる時間の30分前には河川敷に来た僕達だけど、たくさんの屋台がずらりと並ぶその場所はすでに大勢の人でごった返していた。
始まる前に少し屋台を見てまわろうか、と人ごみの中に入った瞬間に、僕は彼の姿を見失いかけてしまった。
けれどすぐに前から手が伸びてきて、
「はぐれないように、ね」
大きくて暖かい彼の手が、僕の手をしっかりと握ってくれたんだ。
「…うん。」
繋がれた手に引かれるようにして歩きながら、僕は俯いて小さく息を吐いた。
だって、きっとものすごく赤くなっているだろう僕の顔なんて、見られるわけにはいかないもの。
2010.8.15
2011.5.5 ちょい手直し
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