朱実物語

プロローグ

　緩やかな丘はやがて朝日を浴びて目覚める。その先に続く町並みは朝日の光を照り返しながら朝を迎える。

　古くから脈々と続く時の流れ。その時の流れに織り込まれた幾千もの物語。人はそれを歴史と呼んだ。

　暗緑の樹々達に降り注ぐ光。時の遥か彼方よりこうして樹々達を育ててきたのだろうか。

　そんな樹々達の根元に一人の老女が腰を掛けている。

　ひっそりと、ただ、静かに腰掛けている。

　瞳を閉じ、ジッと何かを待っているかのようにも窺える。

　そこへ一人の少女がやってきた。そうしてこの物語は幕を開ける。