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南風が青葉の香りを乗せて漂う風薫る初夏、イチナは学校の屋上で授業をサボり昼寝をしていた。
通り過ぎる風が気持ち良く何度もウトウトしていた。
彼は今年から高校に入学したばかりの1年生。お世辞にも真面目とは言えない彼だが、少し他の人と違った‘力’を持っている。
「またこんなトコでサボって!!」
怒鳴り声と共に一人の女の子がイチナに近寄って来た。女の子は寝ているイチナに蹴りを入れると無理矢理イチナを起こした。
「…ってぇな!!何でお前は口と手が一緒に出るんだよ」
蹴られた腰をさすりながら女の子の方を見た。
「手じゃなくて足です!」
揚げ足とも取れるような反論をしてイチナに近づいた。
この女は「ミナ」俺とは小さい時からの幼馴染だ。母親のいない俺の母親代わりみたいな世話好きな女だ。
「ほら!!授業行くよ」
手を引き歩き始めた時、コンクリートに足をとられミナが体勢を崩した。
イチナは咄嗟に‘力’を発動させた。
ミナの動きが止まりイチナだけが動きミナの体勢を元に戻し何事もなく動き出した。
--また使ったの?
イチナは何も言わずにミナの前を歩く。イチナには時間を止める‘力’があった。
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