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ある荒野で一人の少年が魔物の群れに取り囲まれていた。
少年は銀色のローブを着て、フードを被っているために顔は見えないが十六歳程度に見える。
群れの数は百体を越えているように思われる。
大人でも死を覚悟するような状況の中、少年はつぶやくように口を開いた。
「たったこれだけか……」
少年は小さな声でささやいたつもりだった。そうまるで独り言のように。
しかしそんな小さな声でも、目の前の魔物は聞き逃さない。
「たったこれだけ? 坊主頭おかしいだろ。俺達がグレムリンの群れだって分かって言ってるのか?」
「知ってるよ……。グレムリン、体長約一メートル、人語を理解し、大人一人と同程度の力を持つ魔物」
「よく知ってるじゃねぇか。ならこの状況がわかるだろ?」
グレムリンと呼ばれた魔物は、少年に対して挑発的な態度を取っているが、少年から放たれた一言によって状況は一転する。
「もちろん……本気を出すまでもない!!」
そういうと少年は右手を高く上げ呪文を唱える。その瞬間、魔物達は背筋が凍るような感覚に襲われる。
「¨デスライトニング¨」
本当に一瞬の出来事だった。少年が言葉を放つと、辺り一面に巨大な雷が大量に落ち、グレムリンの群れは一瞬で跡形もなく消え去っていた。
「所詮は口だけ……さっさと帰ろ。¨転移¨」
そう呟くと少年は姿を消した。
少年が消えた後には魔物は一体も残っておらず、黒い焦げ跡だけが辺り一面に残っていた。
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