一族の重さ

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「あながち間違いでもないが……ずっと言ってるだろ? 俺はお前だ」 笑いながら話す男は、言葉を切ると同時にその姿を変えていく。 黒いオーラを身に纏い始め、目を真っ赤に充血させて徐々に先程の魔物に近い状態までになっていく。 「はっ! びびってんのか? まぁ仕方ねぇな。……そろそろ本気を出すとしようか」 完全に魔物の状態まで変化した男を見て、少し後ずさりするアルス。 数歩下がった所で、一端目を閉じ息を整える。 「お前を倒すことが出来れば、新たな力を得られるんだな?」 「俺が知るわけないだろ? それに……出来るわけが無いことを聞いても虚しいだけだ?」 しっかりと目を見開いて話す事を馬鹿にするように、男はアルスを嘲笑う。 しかし、アルスは気にしていない様子で闇陽炎を構えて男を睨む。 「出来るか出来ないかの問題じゃない。僕はやらなきゃならないんだ!!」 暗い空に、暗い草原。 どこまでも続く広い世界にただ二人。お互いに睨み合い一人は銃を、もう一人はその手に生える鋭利な爪を構えている。 勝負の行方はまさに神のみぞ知るということだろう。 沈黙を破るように二人は同時に駆け出した。
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