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「どうしてもこっち側には来てくれないのかい?」
話し掛けるベンツの顔には寂しさの表情が見える。
しかしカイルがそれに流されることはなく、じっと睨みつけていた。
「はぁ……。君には期待していたのに残念だよ」
「そんな事、最初から分かっていたことだろ?」
肩を落として落胆するベンツだったが、カイルの言葉を聞いた途端に笑顔を戻す。
目に見える表情は無邪気な笑顔だが、その裏にどのような思惑が隠されているのかは分からない。
どこからか取り出した小型のナイフを左手に持ちながら、右手を開きカイルへと向ける。
「バイバイ」
言葉に呼応するように左手のナイフの刃が虹色に輝き、右手から放たれる。
握りこぶしサイズの輝く球体は、しばらくベンツの右手の前で浮いていたものの、狙い定めたかのように前に進み出す。
「¨雷龍¨」
速いとは決して言えない速度で進む球体だが、進むにつれてその大きさが徐々に大きくなっていた。
地面をえぐり取るほどの大きさにまで達した球体は、カイルの方から見るとベンツの姿を完全に隠していた。
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