本当に大切なもの

2/36
23080人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ
「どうしてもこっち側には来てくれないのかい?」 話し掛けるベンツの顔には寂しさの表情が見える。 しかしカイルがそれに流されることはなく、じっと睨みつけていた。 「はぁ……。君には期待していたのに残念だよ」 「そんな事、最初から分かっていたことだろ?」 肩を落として落胆するベンツだったが、カイルの言葉を聞いた途端に笑顔を戻す。 目に見える表情は無邪気な笑顔だが、その裏にどのような思惑が隠されているのかは分からない。 どこからか取り出した小型のナイフを左手に持ちながら、右手を開きカイルへと向ける。 「バイバイ」 言葉に呼応するように左手のナイフの刃が虹色に輝き、右手から放たれる。 握りこぶしサイズの輝く球体は、しばらくベンツの右手の前で浮いていたものの、狙い定めたかのように前に進み出す。 「¨雷龍¨」 速いとは決して言えない速度で進む球体だが、進むにつれてその大きさが徐々に大きくなっていた。 地面をえぐり取るほどの大きさにまで達した球体は、カイルの方から見るとベンツの姿を完全に隠していた。
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!