未来へと繋がる約束

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咆哮で削られ、残りを右腕に以っていかれる。 が、それだけでは終わらず、目を凝らすと左手の中にも、手の平に隠れてしまうほど小さな物だが魔力の塊を作っていた。 「ぐふっ!! くっ……」 大した受け身も取ることが出来ずに、男はまともにカイルの左の掌を体に叩き込まれる。 飛躍的な身体能力上昇が齎す物理的攻撃はもちろん、その手の中にあった魔力までもを直接当てられた男は、十メートルもの距離を一度も地面に着くことなく壁まで飛ばされてしまう。 「ごふっ……はぁ、はぁ……」 それだけでも並の人間ならば一撃で沈んでいたはずだ。 たたき付けられそのまま、壁に寄り掛かるように座っている男の体は――直前に体を捻ったのか、体の中心に向かったはずのカイルの攻撃は男の右脇腹へと逸れていた――大きく抉られ、大量の血が流れていた。 口元からも血が流れるが、今の男にはそれを拭うだけの力さえも残されていないのか、ただ真っ直ぐにカイルを見つめつづける。 「ぐぎゃぁがぎゃぁぁ!!」 そんな男の様子に構うことなく、カイルは再び両足に力を入れて地面を蹴る。 文字通り、一撃必殺の右腕を使うために。 「ぐ……がばっ!! ごぼっ!!」 「ふ、ん……。何と、間抜けな光景か」 しかし男の子目の前にまできて、男の頭まで後、数センチの所まで腕を振り下ろしていたにもかかわらず、急に電池の切れた玩具のように動きを止めてしまう。 そんな状態で、男が代わりに受けたものは、カイルの口から吐き出された大量の血液だった。
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