23114人が本棚に入れています
本棚に追加
(くそっ……もう、時間が!!)
目だけで男を見送った後、それでもカイルは何とか体を起こそうともがいていた。
その度に開く体中の傷で更に苦しみが増えていくが、気にしている時間もなかった。
「くっ……くっそ……」
それでも歯を食いしばりながら、カイルは血の流れる手で少しずつ地面に円を描いていく。
(みんな……ごめん)
複雑さはほとんどない、円と三角形を組み合わせただけの簡単な魔法陣。
血で描かれたそれは、直径十センチ程と決して大きなものではない。
が、魔法の使えない今のカイルに、その大きさは大した問題ではない。
自分以外の魔力を使う魔術。それは自分の中の魔力を変換しなくて済む分、必要なのは発動させるための鍵なのだ。
流れ込む魔力に反応して魔法陣は強い輝きを放っていく。
部屋中に赤い光りが満ちていく。その中に四つの影が浮かび上がるのを、カイルはうっすらと開けた目に映していた。
◇ ◇ ◇
「ふん、これで準備は完了だ。あとは時を待つばかり」
部屋の中には先程のものを遥かに超える大きさと、数の魔法陣が展開されていた。
その中心に立つ男の傷は未だ癒えていない。
だが、その顔の表情は決して悲観的なものではなく、逆に喜びに満ちた歓喜の表情だった。
最初のコメントを投稿しよう!