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カイルの拳に集まっていく光。
そこに先程のような禍禍しさや邪悪さはなく、明るく優しい感情が込もっている。
優しくも確かな強さを持ったその拳は男の頬を正確に捉えた。
「はぁ……はぁ……」
力強く踏み込んだその一撃をまともに受けた男は、後ろに控える魔法陣よりも更に奥まで飛ばされ地に伏す。
全く動かない男は、しかしながらそのうめき声を聞けば、生きていることは確かだった。
「あとはこれを止めれば……っ!!」
視線を男から魔法陣に移したカイルだったが、そこで力無く膝が崩れる。
カイルに残っている力は微々たるものだったのだ。
無理矢理呼び出したイル達四人から限界まで魔力を貰い、それを纏うことで全てを賄っていたのだ。
しかし、魔力での刀の形成・維持、身体能力の強化などその消費量は常人のそれとは全く比較にならない。
「こんな、ところで……」
必死に体を起こすものの、膝は力が入らずに笑い、立っているのもやっとの事で、何かを成すなど到底出来る状態ではなかった。
しかし、そんなカイルを嘲笑うかのように、魔法陣は回転を加速させていく。
魔法陣発動までの時間は、もう残されていない。
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